最悪の汚職/戦争犯罪者と、陰謀論を振りかざす排外主義の帝国主義者、それに尻尾を振って媚びへつらう極東の極右政治家が結託して世界に果てのない混乱と戦火と殺戮をもたらしている今、AUTO-MODの2年8ヶ月ぶりの新作『In the Wake of KING AUTO-MOD』がリリースされるのは断じて偶然ではない。因果なことに、AUTO-MODの叫びは、その音と言葉の切っ先は、世界が破滅の淵に追い込まれるような危機的状況のときに、おそろしいほどに研ぎ澄まされ冴え渡るのである。
“奴らがホントに欲しているのは戦う切っ掛け the Switch of Genocide
ホラー ホラー 恐怖が又動き始めている”
1981年に発表されたAUTO-MODのファースト・シングルに収録された「Horror」を本作で45年越しにリメイクしている意味は、説明の要もないだろう。その先見性と普遍性。まさしく時代がAUTO-MODを求めているのである。
「俺の命をかけた究極のアルバムだよ。今死んでも悔いのないぐらいのAUTO-MODの最高傑作だ。絶対聴いてくれ」
GENETのそんなメッセージと共にこの新作の音が突然送られてきたのは昨年12月のことだ。GENETの大言壮語はいつものことだが、今回ばかりは納得せざるをえない。凄まじい気迫、熱量、そしてエネルギーである。キング・クリムゾンなど70年代プログレッシヴ・ロックを彷彿とさせる劇的な曲展開、北欧ブラック・メタルを彷彿とさせる陰鬱なヘヴィネス、ハードコアやサイコビリーの暴力性、そしてもちろんAUTO-MODが日本に於ける始祖となったポジティヴ・パンク〜ダーク・サイケ〜ゴスなど雑多な音楽性がカオスとなって渦巻いている。まさしくGENETの音楽人生の総まとめのようなアルバムなのだ。
現在のAUTO-MODのメンバーは次の通り。
GENET:Vocals & Guitar Synthesizer《EVO BOSS GM800》
PAZZ:Drums
TAK:Guitar
SHINJILOW:Bass ,Chorus
Tarot:Violin, Octave Violin, Mellotron
ALi(anttkc) : VJ
レコーディングはALi以外の4人によって行われた。ゲスト等は一切参加していない。ライヴではこれにVJ担当としてALiが参加する。GENETは45年続いたAUTO-MODというバンドの、これが最終ラインナップとなると言明している。
以前GENETは私とのインタビューで「キング・クリムゾンの『Starless』で俺にとってのロックは一旦終わっている」という意味のことを言っていた。クリムゾンでロックが終わり、やがて出会ったのがパンクだった。それは音楽の名を借りた破壊行為であり、失われたカウンター・カルチャーの復権だった。「音楽はどうでもいい。何をやろうと、何もやらなくてもいい。行為としてのパンクが面白い」
そこからGENETの姿勢は終始一貫している。音楽は目的ではなく手段であり、パンクとは音楽のジャンルではなくポリシーであり、GENETにとっては反権力、反権威、反帝国主義、反商業主義を貫き、自由を勝ち取るための生き様であり闘いだった。それは2026年の今も止まることなく続いている。45年前から続く世界の混乱と狂気がとめどもなく拡大し、真実も虚構も判然としないまま世界が壊れていくような、そんな危機感を多くの人々が共有しているからだ。『In the Wake of KING AUTO-MOD』は、そんな人々の集合的無意識を投影しているように思える。
目覚めた王はどこへ向かうのか。GENET自身は、本作をこれから予定される3部作の第一部としている。その全貌は未だ明らかになっていないが、GENET自身は年齢的にもそれを自らの最後の作品として思い定めている節がある。だが別の意味で私は思う。こんなに痛々しい、怒りと悲しみに満ちたアルバムはもう作られないに越したことはない。こんなアルバムを生んでしまうような狂気は、世界を覆う邪悪の念は一日でも早く消えてなくなってしまえばいい。本当に公平で平和で自由で愛に満ちた社会が実現したそのとき、GENET、そしてAUTO-MODというアーティストは、使命を終えるのかもしれない。まだまだもっと、AUTO-MODの作品を聴き続けたい。だがその一方で、これが最後の作品になればいい。本作を聴き直すたび、そんなアンビバレンツな思いに囚われるのだった。
2026年4月11日 小野島 大
AUTO-MOD — In The Wake Of KING AUTO-MOD